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高齢化出産 まだ妊娠は可能?
山下 正紀 先生
妻が高齢なのですが、まだ妊娠できますか?
最近、不妊に悩むカップルの割合が増えてきています。その一因と考えられているのが、晩婚化。
そこで、女性の加齢が妊娠に及ぼす影響を山下レディースクリニックの山下正紀先生に聞いてみました。

Q>
35歳を過ぎたら妊娠を急ぎたい?

A>

以前は、結婚後、赤ちゃんを望んでいるにもかかわらず2年経っても恵まれない、いわゆる不妊の夫婦は、10組に1組といわれていました。ところが最近では、その割合が6、7組に1組とまでいわれるほどに、不妊に悩むカップルは増加してきています。その一つの要因として、晩婚化の問題があると推測されます。女性は、加齢とともに妊孕力(妊娠する、妊娠させる力)が下がりますが、35歳を超えたあたりから低下が顕著になり、42歳を超えるとかなり妊娠が難しくなってしまうのです。そのうえ、加齢とともに流産率は増加します。

Q>
なぜ卵子だけが加齢の影響を受けるのか?

A>
一方、男性は、夫婦生活さえ持てれば、父親になるための年齢の壁はありません。なぜ女性にだけ、加齢によるシビアな妊孕力の低下が起こるのか……、その謎を解く鍵は、配偶子である卵子と精子のつくられ方にあります。精子は、精巣内で日々新たにつくられている、いわばフレッシュな細胞(完成までに約74日間を要しますが)です。ところが卵子は、女性が胎児だったはるか昔に卵巣内でつくられたものが原始卵胞と呼ばれる状態でストックされていて、月経周期がスタートする度に休眠状態にあった小さな卵胞のいくつかが目を覚まし、減数分裂を再開して、そのうちの1個が排卵しているのです。これで、卵子だけが経年による質の低下という深刻なリミットを抱えている理由が、ご理解いただけたことでしょう。

Q>
AMHを測ってタイムリミットを推し量る?

A>
卵子の質の低下に関しては、残念ながら体外受精や顕微授精といった高度生殖医療を持ってしても、補うことができません。当院では、ご夫婦の身体的・経済的・精神的負担を最小限に抑えるため、「できるだけ自然に近い妊娠」を目指していますが、それと同時に卵子のタイムリミットを意識しながら、治療段階のステップアップ時期を見極めていただくよう努めています。卵巣の予備能力を正確に評価できる指標として、最近注目されているAMH(抗ミューラー管ホルモン)の血液検査をいち早く導入し、そのご夫婦に残された時間を推し量ることで、“後悔しない、納得できる不妊治療”を選択してもらいたいと考えているのです。